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MOSA Developer News[MOSADeN=モサ伝]第274号

2007-11-06

目次

  • 「「Wonderful Server Life」    第58回   田畑 英和
  • MOSA Software Meeting 2007(MSM2007)の展望   小池邦人
  • ターミナルの向こうから      第13回  海上 忍 

「Wonderful Server Life」  第58回  田畑 英和

  〜Leopard Server Setup編〜

 ついに待ちに待ったLeopardが発売されました。事前に予約していた人は発売日の午前中から届き始めていたようですし、販売店での発売は午後6時から開始されました。あいにくの悪天候にもかかわらずApple Store Ginzaにはいつものように行列ができ、ちょっとしたお祭り騒ぎでした。通行人もなにごとかと興味津々でしたが、どうやら多くの人はiPodの発売かなにかと勘違いしていたようです。
 それではさっそくLeopardと同時に発売が開始された、Leopard Serverについて解説を始めていきたいと思います。

◇インストール条件
 まずはインストール条件から確認していきましょう。Leopard Serverのインストール条件は次のようになっています。サーバとして使用しますのでネットワーク接続も必要になってきます。

 CPU:Intel/PowerPC G5/PowerPC G4(ただし867MHz以上)
 Memory:1GB以上
 Disk:20GB以上の空きディスク容量

 CPUですがついにPowerPC G3のサポートが打ち切られ、最低でも867MHz以上のPowerPC G4が必要になりました。PowerPC G3のサポートはすでにUniversal対応したTiger Server(v10.4.7)から打ち切られていましたが、バージョンが上がるにつれて求められるスペックは高くなっています。
 20GB以上の空きディスク容量が必要となっていますが、Leopard Serverをインストールしただけで20GBのディスクを消費するわけではありません。実際どの程度のディスクが必要になるかは使用状況によって異なるでしょうが、ファイルサーバなど大量のファイルをサーバ上で管理する場合にはそれなりの空き容量が必要になってくるでしょう。ディスク容量を節約したい場合にはインストール時にプリンタドライバのインストールをスキップ(あるいは必要なものだけをインストール)するとGB単位でディスクを節約することができます。ちなみにプリンタドライバのインストールを省略したところ、インストール後の容量は約8GB程度でした。

 Leopard Serverのライセンスですが、Tiger Serverと同様にUnlimitedクライアント版と10クライアント版の2つがあります。10クライアント版ではファイルサービス(AFPおよびSMB)を同時に利用できるクライアント数が最大10クライアントに制限されます。若干値段が上がりましたが、どちらのライセンスを使用するかはファイルサービスを利用するクライアント数によって判断することになります。
 また、10クライアント版からUnlimitedクライアント版へのラインセスアップグレードも用意されていますので、システムの規模拡大にあわせてあとからUnlimitedクライアント版に移行することもできます。ただしTiger ServerからLeopard Serverへのライセンスアップグレードは提供されていません。

◇インストール
 インストールは新規インストールとアップグレードインストールの2つに分かれます。すでにMac OS X Serverを使用している場合は、Leopard Serverにアップグレードすることができますが、アップグレード対象となるバージョンは次のとおりです。

・Tiger Server v10.4.10以降
・Panther Server v10.3.9

 Tiger Serverがv10.4.10以降となっていますが、v10.4.11はまだ原稿執筆時点ではリリースされていません。アップルのWebサイトをみると、v10.4.11に関する記述がありましたので、リリースはされるのでしょうがはたしていつ頃になるのでしょうか。
 アップグレードにはなにかと問題がつきまとうものですが、事前にアップグレードに関するドキュメント「Upgrading and Migrating」を確認しておくのがよいでしょう。ドキュメントはアップルのWebサイトからダウンロードすることができますが現時点ではまだ日本語訳は公開されていません。また、アップグレードする前にサーバのバックアップをとっておくのもよいでしょう。

・Apple – Mac OS X Server – Resources
http://www.apple.com/server/macosx/resources/

 新規インストールですが、すでにOSがインストールされているパーティションにインストールする場合は、いったんボリュームを削除してからインストールする必要がありす。

 さて、インストールの手順ですがこれまでにMac OS Xのインストール経験があれば基本的には手順は同じですし、初めてインストールする場合でもたいして難しくはありません。インストールDVDからサーバを起動し、画面の指示に従っていけばすぐインストールを開始できるでしょう。
 インストールのポイントをまとめておきました。スクリーンショットも用意しておきましたのであわせてご覧ください。

・インストールのポイント
1)言語選択
 4カ国語から選択でき、日本語で使用する場合には日本語を選択します
 セットアップの段階では言語は選択できませんのでここで選択しておきます
2)インストール先の選択
 インストール先のパーティションを選択できます
 「オプション」ではパーティションの削除を指定できます
3)インストールの概要
 「カスタマイズ」ではインストールするパッケージを選択できます
 プリンタドライバを省略すればかなりディスクを節約できます
4)インストール中
 インストールを開始するとインストールDVDのチェックが行われます
 チェックをスキップするとかなり時間を短縮できます

・インストール(スクリーンショット)
http://www.htabata.com/Site/LeopardServer/Pages/Install.html

 インストール時間ですが、DVDのチェックとプリンタドライバのインストールを省略したところ、Mac mini(1.83GHz/Intel Core Duo/2GB Memory)で約25分程度でした。何度もインストールを繰り返したい場合は、インストール直後の状態でいったんシステム全体のディスクイメージを作成してからリストアすれば、大幅に時間を短縮できます。

 さて、今回はLeopard Serverのインストールについて解説しました。次回はセットアップについて解説しますが、セットアップ中のスクリーンショットはあらかじめ用意しておきましたので、これからセットアップを始める方は参考にしていただければと思います。

・セットアップ(標準構成の場合)
http://www.htabata.com/Site/LeopardServer/Pages/Setup_Standard.html
                             次回へつづく

MOSA Software Meeting 2007(MSM2007)の展望

    MOSA Software Meeting 2007 実行委員長  小池邦人

11月23日と24日の2日間、毎年恒例の「MOSA Software Meeting 2007」(MSM)が開催されます。今回は、より多くの方々が参加できるよう会場を東京都内
(目黒区 池尻大橋)に設定しました。参加者は、初日に午前中のキーノートセッションと午後のアップルジャパン協力による3つのセッションを、2日目にはMOSA主催の8つのセッションのうち4つのセッションを聴講できます。

10月26日に待望の「Leopard(Mac OS X 10.5)」が登場しました。Macデベロッパーには、Leopardの最新テクノロジーを盛り込んだソフト開発という大きなテーマが与えられました。また10月18日には、Steve Jobs CEO自らiPhone用SDKを来年の2月に出すことを発表しました。Macデベロッパーは、今まで積み上げてきたMac OS X環境での開発スキルを、iPhoneやiPod touch用アプリの開発にも生かせることになります。

現状では、Mac OS Xに対するソフト開発技術を習得しても、それを生かす場所はMacプラットフォームに限定されています。Objective-C+Cocoaという開発環境も然りです。しかし、今後はそうした状況が一変するかもしれません。
「OS Xを搭載した新しいデバイスとそこで動くソフト、そしてiTunes Store経由の流通という新市場」が登場する予感がします。これは、現在のMac市場よりはるかに大きな市場となりえます。

そうしたことから、今回のMSMのテーマを「Mac OS Xの新潮流」と決め、その趣旨にマッチしたセッションを多数用意しました。デベロッパーが、このような将来の市場に対してアドバンテージを得るには、なるべく早い時期にMac OSXの最新テクノロジーと向き合い、それを習得し、その可能性を追求しておくことが必要でしょう。デベロッパー同士のオープンな交流の場を提供しているMSMへの参加は、まさにそうした機会にもってこいのはずです。

セッション中の質疑応答、セッション間の休憩時間での談笑、初日に行われる参加者全員参加によるパーティーなど。こうした交流の場を提供できることが、MSMを開催する最大の意義です。毎年こうした場において、デベロッパー同士による内緒話の交換、共同作業の開始、仕事の発注受注(笑)などが実現しています。新しいパートナや情報入手経路を確立するという意味において、MSMはデベロッパーに重要な機会を提供しています。

MSMでのセッションには純粋な技術解説もありますが、90分という短い時間ですべての内容を消化することは不可能です。ですから、各セッションで未体験の技術やコンセプトと出会い、刺激を受けてもらい、次なる開発の方向性を見つけてもらうのが最大の目的です。斬新なアイデアはどこに眠っているかわかりません。職業柄、同業者以外との交流が限定されているデベロッパーにとっては意義ある機会となるでしょう。

ここでは、MSM2007で行われる各セッションを簡単に紹介しておきます。

まずはMSM名物キーノート、テクノロジーライター大谷和利氏の「ソフトウェア・アーティスト宣言!」です。工業製品とはひと味違うソフトウェアの「アートとしての一面」を熱く語ってもらいます。同様に、Macのソフトウェア開発現場はどうなっているのか? 我々はソフトウェア・アーティストとして生きていけるのか? という疑問には、株式会社デジタルステージ 平野友康氏による「デジタルステージのソフト開発の裏側、全部見せます!」が答えてくれるはずです。

発表されたばかりのLeopard(Mac OS X 10.5)関連セッションとしては、アップルジャパンによる「Mac OS X Leopard対応アプリケーション開発について」と、筆者による「Leopardのグラフィックス&開発環境入門」があります。Leopardから搭載された新機能(CoreAnimationやQuickLookなど)をアプリケーションから活用する方法や、一新されたXcode 3.0開発環境などについて解説する予定です。

加えて、いつも開催要望が多いMac OS X対応ハードウェア関連セッションについては、三洋電機 塩路昌宏氏の「Xactiにおけるビデオ処理技術の紹介およびH.264を使用した今後の展開」と、inADA 稲田元彦氏の「SecureSuiteDK forFeliCa on MacOS X入門」の2セッションが用意されています。どちらのハードウェアもまさに「旬の技術」ですので、Macintosh用ドライバ開発者の方々は見逃さないでください。

Apple社のパートナーであるインテルの菅原清文氏には「Leopard対応インテルソフトウェア製品アップデート」を解説してもらいます。関係者でも、インテル社がMac用開発ツールを提供していることを知らない人が多いのですが、なにせ本家本元が提供するツールですので、Core 2 Duoのマルチスレッドに最適化された非常に優秀なコンパイラやフレームワークがそろっています。Xcodeスタンダード以外の優秀な演算ライブラリなどを探している大学やメーカの研究者の方々は、多くの有益な情報が入手できるでしょう。

iPhone用SDKが登場するまでは、iPhoneやiPod touchの活用手段としてはウェブアプリケーションが主役となります。今回のMSMでは、そちらに関するセッションも充実させました。まずはアップルジャパン主催の「Safari 3.0 およびその開発ツールについて」です。また、インフォテリア・オンライン 藤縄智春氏には「オンライン表計算「OnSheet(オンシート)」でつながろう!!」で、ウェブアプリについて解説してもらいます。

LeopardにはCocoaアプリ開発用の「RubyCocoa」が搭載されていますが、その開発者であるフリープログラマ 藤本尚邦氏には「今どきのRubyCocoaプログラミング」において、最新のRuby関連情報を紹介していただきます。また、Ruby同様にOS Xとオープンソースとの関わりは深いのですが、そうしたオープンソースとフトウェア開発ビジネスのあり方について情報を得るには、フリーランスITジャーナリスト 林信行氏とMozilla Japan 瀧田佐登子氏による「ソフト開発ビジネスの新潮流」に参加してみてください。

最近は、Parallels、VMware、CrossOverなどを用い仮想環境でWindows用アプリを使うMacユーザも増えています。プログラマー・ライター 田中俊光氏には
「Windows仮想環境に関するディスカッション」でその可能性について追求してもらいます。WindowsアプリとMacアプリとの同時開発を考えているデベロッパーの方々には、Trolltech 及川寛氏と朝木卓見氏が解説する「Qt APIを使用したマルチプラットフォーム向けアプリケーション プログラミング」が参考になります。「Qt」は、マルチプラットフォーム開発環境として実績があり、AdobeやGoogleが提供するアプリでも利用されています。

「Mac OS Xの新潮流」を直に感じる場としての「MOSA Software Meeting2007」を大いに盛り上げたいと思います。スタッフ一同、皆様のご参加をお待ちしております。興味のある方は以下のウェブサイトをご参照ください。

・参加申込フォーム https://gt104.secure.ne.jp/~gt104186/msm-sanka.html

・イベントトップページ     http://www.mosa.gr.jp/?p=1298
・タイムスケジュール      http://www.mosa.gr.jp/?p=1298&page=2
・各セッションの概要と講師紹介 http://www.mosa.gr.jp/?p=1298&page=3
・FAQ             http://www.mosa.gr.jp/?p=1298&page=4

ターミナルの向こうから      第13回  海上 忍

〜 自動文書作成ツール「Doxygen」その4 〜

 前回は、Doxygenに出力するためのコメントの書き方を紹介しました。今回は、グラフ生成ソフト「Graphviz」をDoxygenと組み合わせ、ソースコードツリーを視覚的に表現する方法を取り上げます。

・Doxygenがアップデート
 単なる偶然でしょうが、Leopardのリリース直後にDoxygenもアップデートされました。今度のバージョン1.5.4では、Fortran 90に対応したパーサが追加されたほか、SIP (C++ Interface Code Generator for Python)のサポートが加えられています。Mac OS X用パッケージ(ユニバーサルバイナリ)の配布も開始されているので、それらの新機能に興味がある方はどうぞ。
 なお、GUIツールが動作しないという前バージョンの問題点は、まだ解決されていないようです。面倒でも、第10回で紹介した方法でバンドル内部のコマンドをコピーし、Terminalからお使いください。

doxygen: http://www.stack.nl/~dimitri/doxygen/

・Graphvizを入手する
 Graphvizは、「DOT」という言語で記述されたグラフ表現を、PNGやGIFなどの画像フォーマットに変換するアプリケーションです。Common PublicLicense準拠のオープンソースソフトソフトウェアであり、無償で使用できることはもちろん、プロプライエタリな製品に組み込み商業利用することも可能です。
 Mac OS X用バイナリパッケージは数種類あり、最新バージョン(v2.12 R3)はCUI版です。pixelglow社が開発したGUI版は、2004 Apple Design Awardを受賞するなど完成度の高いものですが、残念ながら2004年以降更新されておらず、PowerPCバイナリのみの提供となっています(Rosettaでの実行は可能です)。今回はDoxygenから使うことが目的のため、CUI版の使用を前提としますが、あわせてGUI版を導入しておいてもいいでしょう。

Graphviz: http://www.graphviz.org/
CUI版の入手先: http://www.ryandesign.com/graphviz/
GUI版の入手先: http://www.pixelglow.com/graphviz/

・Graphvizで何ができるか
 Graphvizは、DOT言語インタープリタとでもいうべき処理系を内蔵しています。Doxygenで生成したDOT言語の出力(以下DOTファイル)を処理することが目的ですが、少し脱線して、どのようなことがGraphvizで可能かを紹介してみましょう。
 まず、リスト1の内容をテキストエディタへ入力し、適当なファイル名(仮に「test.dot」とします)で保存してください。その後、以下のコマンドラインをTerminalで実行すると、「out.png」という出力が得られるはずです。もちろん、GUI版のGraphvizでも開けます。プレインテキストオンリーのMOSA伝ではお見せできず残念ですが、これだけの記述量で”使える”ツリーチャートが描けるということは、なかなかのものだろうと思います。なお、GUI版のGraphvizには、レイアウト方法を変更する機能が装備されています。ツールバー左端の[Settings]ボタンをクリックし、試してみるといいでしょう。Emacs愛好者には、Emacsのモード「graphviz-dot-mode.el」をお勧めして
おきます(http://users.skynet.be/ppareit/projects/graphviz-dot-mode/graphviz-dot-mode.html)。

- - - - -
$ dot -Tpng test.dot -o out.png
- - - - -

- - - - -
リスト1(UTF-8で保存してください)

digraph test {
   node [ fontname="Osaka" ];
   首都圏 -> 東京都;
   首都圏 -> 神奈川県;
   首都圏 -> 千葉県;
   首都圏 -> 埼玉県;
   東京都 -> 新宿区;
   新宿区 -> 西新宿;
   西新宿 -> リンゴ;
   神奈川県 -> 横浜市;
}
- - - - -


・DoxygenからDOTファイルを出力する
 Doxygenで文書を自動生成するとき、設定ファイル(Doxyfile)を必要とすることは第11回で紹介したとおりです。Graphviz用のDOTファイルを生成するときも、このDoxyfileに必要なオプションを加えるだけで準備は完了です。もちろんCUI版のGraphvizをインストール済であることが前提ですので、念のため。
 Doxyfileには、「HAVE_DOT」オプションを「YES」に変更します(デフォルトでは「NO」のはずです)。「CALL_GRAPH」オプションもYESに設定しておきましょう。これで、各関数について参照先の関係図が生成されるようになります。
 その後ふだんどおりにdoxygenコマンドを実行すると、htmlフォルダにDOTファイルが生成されます。試しに、htmlフォルダのindex.htmlをWebブラウザで開き、[ファイル]タブにあるソースコードファイルを適当に開いてみましょう。インクルード依存関係が図形化されていることが確認できるはずです。

◇今週だけ小池さんの「Carbon視点でCocoa探求」の連載をお休みしかわりに『MOSA Software Meeting 2007(MSM2007)の展望』を掲載しました◇

◇MOSAからのお知らせと編集後記は割愛します◇

 

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