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MOSA Developer News[MOSADeN=モサ伝]第348号

2009-06-30

目次

  • WWDC2009初参加レポート           今井 敬子
  • 「Wonderful Server Life」    第95回   田畑 英和
  • 小池邦人のCarbon視点でiPhone探求
  • ターミナルの向こうから      第50回  海上 忍 

WWDC2009初参加レポート                 今井 敬子

始めまして。コムシス東北テクノの今井敬子と申します。
昨年からiPhoneアプリの開発を始めました。他には、Android、Nintendo DSi、PSP等のアプリ、Webアプリの調査、開発等にも携わっております。今年、初めてWWDCに参加しましたが、このたび、初参加の感想を書かせていただけるとのお話をいただきました。
以下の項目ごとに、感じたこと、考えたことをお伝えできればと思います。

1.出発前

出発前に、MOSAで企画された「事前交流会」と「英会話&異文化マナー講座」に参加させていただきました。
事前交流会は、MOSAに入会したばかりで、かつ初めて参加させていただいた企画だったので、初めこそ緊張しましたが、色々な方とお話をすることができました。また、渡航前にやること等の説明や、WWDCの歩き方等の資料をいただき、WWDCまでにやっておくべきことを整理できたのが良かったです。

英会話&異文化マナー講座では、ネイティブの講師の方と英語で沢山会話させていただいたことも良かったですが、現地の人の会話の特徴や「名刺は最初に渡すものではない」「握手が弱いと変に思われる」等、日本とは異なる習慣や考え方についてレクチャーしていただけたのが大変ためになりました。(実際、現地の方の握手はかなり力強かったです。2回ほどしかその機会はあ
りませんでしたが・・・)

私は今回、弊社からは一人で参加したのですが、WWDC開催中は、これらの企画の場で知り合った方々と日程の多くをご一緒させていただくことができ、大変心強かったです。
また、一人で行動していたら気付かなかったであろう様々な事を教えていただきました。
WWDC前に、多くの方とお知り合いになれて本当に良かったと思っています。

2.英語に関して

WWDC参加にあたって、一番不安だったのが「英語のセッションを聞いて果たして分かるのか」という点でしたが、プレゼンの資料を見ながらだったせいか、思っていたよりもセッションは理解できました。ただ、スピーカー次第の部分もあり、セッションによっては、ついていくのが困難だったものもあります。かなり楽しみにしていたセッションで、喋るのは早い、メモを取っているうちにスライドが2、3枚進んでしまう、といった感じになってしまい、途中でメモするのを放棄したものもありました。

Attendeeサイトで資料が公開されているのである程度フォローできますが、やはりもう少し耳で理解できるようになりたいと思います。また、プレゼン後に質問を受け付けるセッションが多数ありましたが、プレゼン時の話し方よりもスピードが速く感じられ、あまり理解できなかったのが残念です。

3.WWDCで得られた事

いざ参加すると、「せっかくここまで来たんだから、モノにして帰ろう」という欲が湧きます。
また、何よりもAppleの担当者から情報を入手できる、またとない機会です(社会人になってしまうと、興味のある技術の説明を受ける機会自体、貴重だと思います)。セッションで聞いた事などは、想像していた以上に頭に入ってきた感じがします。まだ新機能のほとんどは使っておらず、実践はこれからですが、OSリリース後にドキュメントを自力で読み始めるのとは比べ物にならないくらいの収穫を得たと思っています。

また、多くのデベロッパと交流できたことが、大変良い刺激になりました。色々な方が作ったアプリを見せていただき、直接質問等できるのが大変楽しかったですし、有意義でした。

一方、反省点もあります。
何より悔やまれるのは、準備不足であったことです。
今回私は、ほとんどiPhone OS3.0に触れないまま参加してしまいましたが、もし、もう少し新機能の概要等掴めていれば、深い切り口でセッション等に臨めたと思います。

また今回、iPhone OSのオーディオ関連で質問したい点があったのですが、質問するためのサンプルコードの準備がオーディオ関連のラボまでに間に合わず、Open Hoursに質問するのが精一杯でした。何とか聞きたかったことの半分くらいは達成したのですが、いざ持ち帰って再度試してみると別の疑問が出てきてしまいました。
ちゃんと準備ができていれば、ターゲットのラボで質問し、追加の疑問はOpen Hoursで解消する等、もっと有意義にラボを活用できたのではないかと思います。

ひとつ想定外だったのは、WWDC期間中、思ったほど時間の余裕がなかったことです。
出発前には、「間に合わない分はWWDC期間中の夜にでも準備すればよい」とのんきに構えていましたが、WWDCが始まってしまうとそんな余裕は全くありませんでした。恐らく、セッションを聞くのに想像以上の体力・気力を使ったことが一番の原因だと思います。
もし次回も参加できるならば、ちゃんと備えをして臨みたいです。

4.気候について

涼しいとは聞いていたので、日本でWWDCの時期に着ていたら暑いと感じるであろう程度の衣料は持っていきました。しかしそれでも寒いと感じる時がありました。日中の一瞬だけ、日が差して汗ばむ陽気になりますが、朝も夜も結構冷えます。また、風が吹いている時間が長く、それも寒く感じる一因でした。キーノートで朝から並ぶ際や、野外でのパーティなどは、薄手のコート等あった方が安心かもしれないと思います。

気温の低さは予想以上でしたが、幸い天候に恵まれ、きれいな空の下で、気分良く一週間を過ごすことができました。
あまり観光はできませんでしたが、お昼休みが長いので、会場付近の散策ができました。
パウエル駅周辺の、様々なショップを見ているだけでも楽しかったです。

以上を持ちまして、感想とさせていただきます。
最後になりましたが、WWDC期間中にお世話になった皆様に、この場をお借りしてお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。

◆執筆者プロフィール
コムシス東北テクノ 今井敬子

昨年からiPhoneアプリの開発を始めました。Macでの開発はこれが初めてで
す。その前は、主にWebアプリケーションの開発を行っていました。
http://www.comsys-tt.co.jp/

「Wonderful Server Life」  第95回  田畑 英和

〜「Snow Leopard Server」編〜

 WWDCで発表のあったiPhone 3GSが6/19に米国で発売されました。最初の週末で100万台以上の売上を達成し、そして6/26には日本での発売も始まりました。
 WWDCで発表のあったのはiPhoneだけではありません。次期OSのSnow Leopardもその詳細が明らかになってきました。今回は予定を変更してサーバ版のSnow Leopard Serverについて紹介していきます。

◇Snow Leopard Server
 まず発売時期などの概要ですが、クライアント版のSnow Leopardと同様9月に出荷開始とだけアナウンスされています。これまでクライアント版とサーバ版は同時に発売されていましたから、おそらく今回もそうなるでしょう。
 クライアント版はMac OS X Leopardからのアップグレードが29ドルというこれまでにない超低価格で発売されることが発表され話題になりましたが、サーバ版のMac OS X Server Snow Leopardは無制限ライセンスが499ドルとこれまでの半額程度の金額になります。日本円での価格はまだ発表されていませんが、Mac miniと組み合わせれば10万円台からサーバが構築できることになりそうです。
 これまでは、AFPおよびSMBに接続数の制限があった10クライアントライセンス版もあったのですが、Snow Leopard Serverではどこにも記述がないことから無制限ライセンス版のみに統一されるのではないでしょうか。ちなみにこれまでは10クライアントライセンス版の価格が499ドルでした。

 Snow Leopard Serverの動作環境ですが、Leopard Serverと比較すると以下のようになっています。

 Snow Leopard Server:Intel CPU、2GBのRAM、10GBのディスクスペース
 Leopard Server:Intel/PowerPC G5/PowerPC G4(867MHz以上)
         1GBのRAM、20GBのディスクスペース

 まずCPUがIntel専用となっています。すでにすべての製品ラインがIntelに移行しているわけですが、いよいよPowerPCが動作環境から外れることになります。メモリは最低2GBのRAMが必要となっていますが、これはLeopard Serverの倍の容量となっています。ただしハードディスクのディスクスペースは半減し少なくとも10GBとなっています。OSがスリム化したことでディスクスペースが節約できるということですね。

◇Snow Leopard Serverの新機能
 クライアント版のSnow Leopardは新機能の追加よりも、基盤の強化に力を入れていますが、サーバ版では色々と新機能の追加があります。まず新サービスとしてAddress Book ServerとMobile Access Serverが追加されます。
 Address Book Serverではユーザごとに「アドレスブック」で管理するコンタクト情報をサーバで管理できるようになります。これにはCardDAVというプロトコルを使用します。
 Mobile Access Serverでは、VPNを使わずにインターネットから会社内などのプライベートなネットワークに安全にアクセスできる環境を提供します。クライアント側でのソフトウェアのインストールや設定は必要なく、メールやカレンダーサービスなどにアクセスでき、iPhoneからも利用可能です。

 既存のサービスもさらに強化されます。Leopard Serverで新登場したiCal Server、Podcast Producer、Wiki Serverがそれぞれバージョンアップします。
 iCal Serverではこれまで「iCal」などCalDAVに対応したクライアントソフトが必要でしたが、これからはWebブラウザベースでの利用も可能になり、さらにiPhoneからのアクセスも可能です。
 Podcast Producerでは新たにデュアルソースのキャプチャに対応し、カスタムワークフローを作成する「Podcast Composer」が新たに搭載されます。
 Wiki ServerではなんとQuick Lookを搭載し、Webブラウザ上でプレビューが表示できるようになります。またiPhoneからのアクセスにも対応しています。
 
 さらにメールサービスがプッシュメールに対応するなど、他のサービスでも様々な改良が加えられています。またパフォーマンスの向上も期待できます。

◇アップル技術者認定資格試験・認定トレーニング
 さて話は変わりまして、最後に認定試験/トレーニングについて取り上げます。日本ではPantherのころからアップル社のIT技術者向け認定トレーニングが実施されてきましたが、ようやくLeopardに対応したコースが実施されることになりました。ダイワボウ情報システムが新たにアップル公認のトレーニングセンターを開設し、2つのトレーニングコースを7月から東京と大阪で開催
し、順次全国7カ所に展開する予定になっています。
 またトレーニングだけではなく、アップル技術者認定試験も実施され、こちらも全国展開が予定されています。
 
・ニュースリリース
http://www.pc-daiwabo.co.jp/release/090624.html
                             次回へつづく

WWDC 2009に思う(2008/06/26)       小池邦人

6月8日(日本では 6月9日の深夜)Steve Jobs CEO不在のまま、Philip Schiller副社長によるキーノート(基調講演)でWWDC 2009が開幕しました。
「今回はJobs不在だからねぇ…」と油断していると痛い目に遭うと思い、キーノート待ち行列には午前6時前から並びました(前回より早い)。予想は的中、待ち行列は昨年以上の延びを示し、大きな会場をぐるりと一回り囲んでしまいました。今年の参加状況も「満員御礼!」です。会場に遅く到着した人の中には「オーバーフロールーム」(会場へ入れなかった人が映像のみ鑑賞す
る部屋)からもオーバーフローしそうになったという話も流れていました(笑)。行列の付近には、お馴染みのMacTechマガジン配布チーム、Tシャツや小物の投げ込みチーム、ドングルSDKを配布するメーカ、iPhone用ポルノサイトを宣伝する水着のお姉さんを乗せた馬車まで登場し、退屈な待ち時間を存分に楽しむことができました。

Philip Schiller副社長(このために少し痩せたのか?)のちょっと緊張気味の司会と、担当重役のそつのないナビゲートでキーノートも順調に進みました。何とか笑いを取ろうとした場面がことごとく失敗に終わったのは、まあ愛嬌です(笑)。WWDCのセッション内容はNDA(秘密保持契約)扱いで詳細開示は不可ですが、キーノートはNDA適用外なので、その概要については、既に関連サイトに多数掲載されています。今回も詳細については、そちらにお任せしたいと思います。噂通りにiPhone 3GSが登場しましたし、低価格MacBook Proの発売、Snow Leopardの最終日程と驚きの$29バージョンアップの発表など、ネタ的には十分満足できるキーノートだったと感じました(不満はCEOの不在のみ?)。ただし、iPhone OS 3.0やSnow Leopardの機能は既に発表済みの内容だったわけで、ソフト屋としては「次の一手」が何も示されなかった点に、若干のモヤモヤを感じたことも事実です。

初日はiPhoneのみを所有している参加者が多かったのですが、2日目からは、会場の多くの人がMacBook Pro(17インチ多し)を持ち歩いていました。キーノートでお買い得13インチMacBook Proが発表されたおかげで、それを現地調達して使う人もいたようです(会場のゴミ箱に空き箱が捨てられていた)。ほとんどの人は、セッション内容のメモ取りなどでMacBookを活用しています
が、後ろから画面を覗くと、自作アプリを一生懸命デバッグしている人も結構いて「ちゃんとセッション聞けよ!」とか、声をかけたくなります(笑)。また「変なデスクトップだな?」と見ると、そのまんまのWindows XPが走っていたりして(昔からLinuxは結構いた)吹き出すことも多々ありました。そうそう、今はやりのネットブックをハックしてMac OS Xをインストール(大胆)している人にも結構遭遇したことも追加しておきましょう。

昨年のWWDCでは、Apple社のWebサイト(参加者のみ入れる)へと最新スケジュールがアップされ、それをiPhoneやiPod touch(もしくはMac)で参照していたのですが、今回は、iPhone&iPod touch専用の「WWDC09」アプリが用意されていました。それをダウンロードし自分のiPhoneにインストールすることで、参加者は最新のイベントやセッションスケジュールを参照できるわけです。アプリへは逐次最新情報が転送され、未読情報は画面の数値バッチで忠告してくれます。また、別途デバイスへインストールする「Provisioning Profiles」(認証ファイル)も同時配布されたのですが、これがオールマイティ版(デバイス識別子のUIDIを判断しない)と分かり、デベロッパーの中から「この仕組みを利用できるサービス形態が欲しいぞ!」と言う「大きな声」が上がっていたことも付け加えておきましょう(後に追記有り)。

昨年のWWDCの感想で「美しきスツールのために、次のWWDCでは4本目の足(ビジネス分野への進出)についての戦略を公開して欲しい!」と書いたのですが、残念ながらそちら方面については、Snow LeopardのExchange対応が強調された程度で、これといった大きな発表はありませんでした。当然「Mac OS Xのライセンシング」の話などはこれっぽっちも出ていません。また「パソコンを生産をしていないSunやIBMとMac OS Xがらみで提携したら?」とも書きましたが、そのSunも既にOracleに買収されてしまったわけでして、状況の変化の速さに驚かされる今日この頃です。まあ、Apple社のことですから「抜き足、差し足、忍び足」で、知らない間に自社製品をビジネス分野へジワジワ浸透させていくための準備をしているかもしれません…。iPhoneがらみに関しても、その傾向が見え始めている気もしています。

今回開催された多くのセッションは「iPhone OS 3.0」関連が中心です。また、全体の60%が初参加だと言うこともあり、「入り口」としての開発環境(Xcode Tools)関連のセッションも活発だったようです。しかし、十数年もWWDCへ通い続けているデベロッパーから見ると、それ以外は「成熟」の極みといった雰囲気が漂っていました。今まで何度も主役を演じてきたQuickTimeも
QuickTime Xがらみのセッションがひとつだけ、今回はCocoaにしても目新しいトピックスはほとんど無い状況でした(当然Carbonセッションなどは皆無)。
Snow Leopardで導入予定の、64Bitカーネル、OpenCL、Grand Central Dispatchなども、企業や大学のサイエンス系研究室では大いに力を発揮しそうな技術なのですが、コンシューマに直接結びつくトピックスではないことから、盛り上がり方も今ひとつ限定的なようです。

しかし、こうした地味なテクノロジーが、OS自身や付属アプリの開発に大いに生かされている可能性は無視できません。つまり、Apple社の自社開発におけるソフトの処理速度の改善や、より強固なシステム構築に大きく貢献しているわけです。そのことは、間接的ですがコンシューマにとっても大きなメリットとなるはずですから、Snow Leopardの登場が本当に楽しみになってきました。さらに気になった点は、キーノートでも見え隠れしていた、Mac OS XとiPhone OSの「統合」の流れです。現在、両OSでは「Core OS」と呼ばれているシステムモジュールが共通で存在しており、その割合は全体の80%を占めます。後は、両OSのユーザインターフェース・フレームワークであるAppKitとUIKitの差異を縮めれば、2つのOSは割と簡単に統合の道を歩むことになります。つまりCPU依存でコンパイルし直せば、MacでiPhoneのアプリが起動し、iPhoneでMacのアプリが起動することになります。

まあ、統合自体は少し未来の話かもしれませんが、「一歩先を行く」iPhoneアプリの開発を目指し、その先行メリットを得たい開発者は、iPhone OSと同時にMac OS Xの最新テクノロジーも勉強しておくことをお勧め致します。iPhone OS 2.0から3.0では「Core Data」「Spotlight」「OpenGL 2.0」「Pastebord」「VoiceOver(Accessibility)」などが、Mac OS X側から降りてきました。次の機会には「QTKit」「ImageKit」「CoreImage」「QuartzComposer」「Binding」「OpenCL」などが降りてくる可能性があります。逆に、Mac OS Xではトラックパッドによる「Multi Touch」機能が充実してきており、将来的
にはiPhone OS特有の機能「MapKit」「GameKit」「StoreKit」「LibraryAccess」などが実装されるかもしれません。MacやiPhone(将来登場するかもしれない新デバイスも)を区別せず、総合的にApple社のテクノロジーを習得しておくことは、今後さらに重要性を増すことになるかもしれません。

今回のWWDCで一番残念だった点は「App Store」の改善について何も言及されなかったことです。iPhone 3.0でアプリ内からコンテンツを購入できる機能は追加されましたが、 App Store自体の機能拡張については何も新しい発表がありませんでした。現在、5万以上の商品が店頭に並べられているApp Storeですが、どうひいき目に見ても、自分の欲しているアプリを簡単に見つけて購入できるという「ショップ」の心地良さはありません。商品数が多くなっていくペースに店舗のリソースの整備が追いついていないわけです。やはり「欲しい商品を見つけてくれる優秀な店員」が絶対に必要です。まあ、AIを駆使した検索エージェントを搭載しろとまでは言いませんが、もう少し買う人に優しい店舗に改築して欲しいところです。これはiPhoneアプリ開発者とユーザのために早急に改善すべき問題だと思うのですが、Apple社はいったいどうするつもりなのでしょうか?

もうひとつの不満点は「iPhone Developer Program」契約形態の拡充が示されなかったことです。現在、このプログラムには「スタンダードプログラム」と「エンタープライズプログラム」の2種類が存在しています。このうち「エンタープライズプログラム」は社員数500人以上の大企業(加入している企業を聞いたことがないが…)が対象なので、ほとんどのiPhoneアプリ開発者は
「スタンダードプログラム」へ加入しているはずです。しかしこの契約では、開発したiPhoneアプリはApp Store経由でしか販売できません。それ以外の手段としては、デバイス100台限定でAdHocによる配布が利用できます。「あれ、AdHocは200人までじゃないの?」と思われる方も多いでしょうが、現状のAdHocでは配布用リストには200人まで登録可能ですが、対象デバイスの方は何故だか100台までしか登録できないのです(Portalサイトのバグ?)。そんな訳で、AdHoc対象者は100人までに限定されてしまいます。

システムインテグレートを生業としているMac関連企業が、iPod touchに独自の自社アプリをインストールし、Mac関連ソフトや周辺機器と一緒に販売しようと立案したとします。 例えばMacで組んだPOSシステムの端末にiPod touchを使い、そこに専用アプリをインストールするようなケースを考えましょう。
さて、このiPhoneアプリをどうやってデバイスにインストールするのか?
「App Storeに無料アプリとして置き、ユーザにダウンロードしてもらえば良い…」という考えもあるでしょう。しかし、何らかの理由 で(配布タイミング、セキュリティ、環境設定、ライバル対策など)、それが不可能だと判明したら…そう、AdHocを使うしか手がないのです。つまり、商品が100セット売れる度に、さらに1万円を支払って「iPhone Developer Program」を追加契約するといった冗談のような話が現実となります。

Apple社が「それはレアケース」と考えているなら大間違いです。例えば一番の例は、今回参加者に配布された「WWDC09」アプリです。これは、不特定多数にApp Store経由以外でアプリを配布するケースです。こうした状況は、iPhoneが想定する「ビジネスシーン」でも頻繁に起こるでしょう。これを無料としてApp Storeに置かなかった理由は「一般ユーザによるダウンロードを避
けたい」「プロファイル設定でWWDCが終われば起動不可にしたい」などが考えられます。つまり、自社でアプリをきめ細かくコントロールするのには、App Storeによる配布形態は大変不向きなのです。より多くの用途にiPhoneを活用したいと考えた時、現在の「iPhone Developer Program」の契約には大きな不備があります。会場でも多くの参加者の方に「何か良い方法はありませんか?」と尋ねられたのですが、現状ではうまい解決方法はありません。Apple社には、早急に何とかしてもらいたいものです。

どうやらiPhoneの改訂ペースは1年毎で確定したようなので、次回もWWDC開催時期とも重なる可能性があります。また、Macがらみの次なる展開(Snow Leopard後)にも注目が集まるでしょう。加えて、噂の「新デバイス」が登場しており、そのOSやSDKの話題で、いつも以上に盛り上がっていることを期待したいと思います。
                                 以上

ターミナルの向こうから      第50回  海上 忍

〜 ローカルでPHPを使う(1) 〜

・PHPとMac OS X
 Macユーザの間でも、自身が運営または関与するWebサイトにPHPを利用している、というケースは少なくないはずです。自前のサーバならいざしらず、LAMP(Linux / Apache / MySQL / {Perl|PHP|Python|})ベースのレンタルサーバを使おうとなると、避けては通れないことすらあります。
 PHPは、ひとことで言えば「動的にWebページを生成するためのプログラミング言語」です。サーバサイドで動作し、生成されたデータは通常のHTMLとしてクライアント(Webブラウザ)に送信されるため、ユーザ側には特別な準備は必要ありません。この点が、JavaScriptなどのクライアントサイドで動作する処理系との大きな違いといえます。
 一方で、サーバサイドで動作するがゆえの難点もあります。HTTPサーバと連携することが前提にあるため、記述したスクリプトをテストするときには、PHP本体にくわえApacheなどのHTTPサーバが必要になります。出力されたHTMLを確認するためのWebブラウザも必要です。レンタルサーバの多くはこの条件を満たしていますが、公開サーバでテストするわけにはいかないため、ローカルにPHPのテスト環境を構築することが一般的です。
 Leopard(クライアント版)には、PHPとApacheの両方が標準装備されているため、PHPのテスト環境としての条件を満たしています。しかし、デフォルトではPHPが無効化されているため、これから述べる作業が必要になります。

・PHPを有効化する
 Mac OS X 10.5.7には、PHP 5.2.8が収録されています。これを有効化すれば、HTTPサーバ(Apache 2.2.11)をシステム環境設定からONにするだけで、PHPスクリプトの実行環境がMac上に出現します。
 Leopardでは、Apacheの設定ファイル(httpd.conf)は/etc/apache2ディレクトリに置かれています。ただし、管理者以外は書き込めないようファイルパーミッションが設定されているため、以下に示すとおり、sudoコマンド経由でテキストエディタ(ここではpicoを使います)を起動したうえで、編集作業を行います。

- – - – -
$ sudo pico /etc/apache2/httpd.conf
Password:
- – - – -

 sudoは、引数として与えたコマンドライン(ここではpico /etc/apache2/httpd.conf)を、管理者権限で実行するコマンドです。管理者権限でテキストエディタを起動することにより、一般ユーザには読み書きが制限されているファイルであっても、フルアクセスが可能になります。一方では、安易にアクセスされるべきではない重要なシステムファイルを自由に改変/削除できるこ
とも意味するため、慎重な運用が求められます。
 なお、sudoコマンドを実行すると、管理者のパスワードの入力が促されます。5分以内であれば、再度sudoを実行してもパスワードの入力は求められません。

 picoで行う作業は、httpd.confの114行目行頭にある「#」を削除し、上書き保存することです。114行目までカーソルキーで移動してもかまいませんが、Control-Wをタイプして「php」+enterと入力(「php」で検索)したほうが効率的です。deleteキーで「#」を削除したあと、Control-Xでpicoを終了するとき「Y」と答え、続けてenterを押せば、ファイルの上書き保存は完了で
す。

- – - – -
#LoadModule php5_module libexec/apache2/libphp5.so
 ↓ ↓ ↓
LoadModule php5_module libexec/apache2/libphp5.so
- – - – -

・動作を確認する
 これで、システム環境設定の「共有」ペインで「Web共有」にチェック(すでに有効化されていた場合はチェックボックスをいちど外して再度チェック)を入れれば、PHPのテスト環境は準備完了です。念のため、以下の1行のみ記述したテキストファイル(仮に「checkme.php」とします)を、「ホーム」→「サイト」フォルダ(~/Sites)に保存し、動作の確認を行いましょう。適当なWebブラウザで「http://localhost/~ユーザ名/checkme.php」にアクセスし、システム情報が表示されれば作業は完了です。

- – - – -

- – - – -

 なお、環境によっては、Apache2のアクセスログ保管用ディレクトリが消失していることがあります。筆者のMacBook Proも、ふと気付けばそのようになっていました。原因を特定してはいませんが、Time Machineで復旧したことが原因かも……とりあえず、以下のコマンドラインを実行し、復活させることができました。Web共有を有効化しても「サーバに接続できません」と表示される場合には、/var/log/apache2ディレクトリの有無をチェックしてみましょう。

- – - – -
$ sudo mkdir /var/log/apache2
$ sudo chown root:wheel /var/log/apache2
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◇MOSAからのお知らせと編集後記は割愛します◇

 

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