Apple Inteligenceが発表されて初めてのMSMです。パーソナルコンピューティングの新しい時代への幕開けに相応しく多彩なセッションを組みました。大勢のみなさんに参加いただき盛会なMSM2024となりました。
たくさんのご参加を心よりお礼申し上げます。
参加されなかった皆様も、どうぞレポートでお楽しみください。
今後もイベントの開催を計画しています。次の機会には、ぜひご参加ください。
まず、「Apple新時代の幕開け」と題して、Apple Vision ProとApple Intelligenceの進化と今後について大谷さんが解説されました。
Apple Vision Proは、現実空間と仮想空間の融合を目指し、Appleが掲げる「空間コンピューティング」のビジョンを具現化するものです。大谷さんは、visionOS 2で実現された新機能を紹介し、ワイドスクリーンでの作業や空間内でのリマインダー設定など、実際の利用シーンを具体的に語りました。
また、メタ社が発表したARグラス「オリオン」との比較を通じて、Appleの空間コンピューティング技術の特徴とその可能性についても議論が展開されました。オリオンが現実空間に情報を重ねる「半透過型」であるのに対し、Vision Proは完全な仮想空間への没入が可能である点が強みとされます。大谷さんは、Appleが今後のARグラス開発でさらなる技術革新を図る可能性についても言及し、未来への期待を高めました。
さらに、Appleの生成AIの今後の展望についても触れ、現在のSiriの進化や、AIを活用した情報構成の精度向上の可能性について解説。Apple Intelligenceを通じて、信頼性と正確性を兼ね備えたAI体験を提供し、ユーザーの日常生活や業務に貢献することが予想されます。
最後に、大谷さんは、Z世代をターゲットとした今後のマーケティング戦略についても説明しました。特に、Appleが透明性や信頼性を重視し、環境問題や社会的責任を意識した製品開発を行うことが、若年層の支持を得るための鍵であると述べました。
まず、iOS 18のリリースによって提供された新たなApple Intelligence機能について解説が行われました。豊田さんは、iOS 18.1で利用可能になったパーソナルインテリジェンスシステムを紹介し、特に文章構成をサポートするライティングツールやノーティフィケーションのサマリー機能について、デベロッパーの視点から詳しく説明しました。また、iOS 18.2で追加されたイメージ生成機能「イメージプレイグラウンド」についても触れ、実際の利用シーンを具体的に語られました。
さらに、豊田さんは、Apple IntelligenceとSiriの統合によって可能になるより自然で会話的なインタラクションの進化について述べました。これにより、ユーザーがよりパーソナライズされた体験を得られるようになると期待されています。新しいAPIである「AppIntents」も紹介され、アプリケーション機能をシステムの各所から呼び出すためのフレームワークとして、多用途に利用できる点が強調されました。
豊田さんは、このApple Intelligenceの進化がもたらす、より賢明で柔軟なSiriの未来を展望し、デベロッパーが積極的にこれらの新技術を活用することがAppleユーザー体験向上につながると結論づけました。
このセッションでは、Apple IIとその関連製品の話題を中心に、参加者の間で懐かしい思い出と共に多くの知識が共有されました。
まず、神田さんが所有するApple IIが紹介され、Apple製品がまだ希少だった当時の購入体験が語られました。また、Apple II上で動作する「ロードランナー」や「ファンタビジョン」といった、当時のコンピューターグラフィックスやゲーム開発の先駆けとなったソフトウェアについて、大谷さんがその魅力を詳細に解説しました。
さらに、大谷さんは、Apple IIが備える「コンストラクションモード」の革新性についても触れ、ユーザーが自身でステージを構築できるゲームデザインが、後のクリエイティブツールにも多大な影響を与えたと指摘しました。また、ロードランナーの続編の難易度設定や面白さについて、ソニーとのエピソードを交えて語られ、当時のゲームデザインに対するこだわりも垣間見られました。
最後に、神田さんが行ったApple IIの修理についても話題になり、古い電子機器の修理の難しさや部品の入手の問題が共有されました。コンデンサーの交換を行い、製品を動作させるための奮闘が披露され、参加者全員が製品の復元に驚嘆していました。
Shinya Bさんは、AIが教育現場にもたらす影響と、それに伴う課題について講演しました。まず、彼はアートを教える立場から、AIがアートやデザイン分野に与える変革について説明しました。学生たちがAIツールを使って作品を制作する際、AIによる自動生成の品質向上が創造性にどのような影響を与えるかを具体例を交えて紹介しました。
特に、大学におけるAI利用の「禁止令」の話題が注目され、AIツールの使用を認めるか否かで教育者間でも議論が分かれている現状が浮き彫りにされました。AIを活用した文章作成やデザインの学習が教育の目的と合致するか、またAI生成物の評価方法についての難しさが指摘され、今後の教育方針の再考が求められていると述べました。
また、彼はアート教育においてAIの使い方を教えるべきか否かについても触れ、学生たちがAIに依存せず自らの創造力を発揮できるよう、適切な指導が必要であると強調しました。
visionOSとApple Vision Proの勉強会の話題を皮切りに、Apple Vision Pro発表以降の開発状況や、活用シーンについて話が展開されました。
2023年のWWDCで発表されたビジョンプロが契機となり、ビジョンOSの勉強会が立ち上がり、参加者はDiscordを通じて活発に交流してきました。さらに、2024年にはオフラインでの勉強会も実施され、多くの参加者がフェイスタイムを活用した「空間ペルソナ」のテストなど、実践的な検証を行っています。
特に、Facetimeによる最大人数の制限や、シェアプレイを通じたオンラインでの共同作業の可能性についても議論が行われました。こうした取り組みは、Appleの「空間コンピューティング」を活用した新しい学びや体験の場の創出を目的としています。また、Yugo氏は、来年開催予定の「Vision Dev. Camp東京」についても触れ、Vision Proを活用した大規模なハッカソンイベントとしての構想を披露しました。
まず中野さんは、Xcode 16に搭載された「Predictive Code Completion」とiOS 18向けSwiftUIの新機能について紹介しました。
Predictive Code Completionは、コードを予測的に補完する機能で、開発のスムーズな進行を助ける「同僚のような存在」としての役割を果たします。
そのためユーザーの入力に基づき、次に必要なコードを自動的に予測し、プログラミング効率を向上させる機能として、多くの開発者に歓迎されています。
さらに、SwiftUIの新機能として、シート表示の柔軟なサイズ設定が可能になった「Presentation Sizing」や、コンテンツに応じてサイズが調整される「Fitted」オプションが紹介されました。スクロールビューに関する改善も進み、ユーザーの操作に応じた画面の動的な変化がより容易に実現できるようになっています。また、新しいアニメーション効果やメッシュグラデーションの導入により、視覚表現の幅も広がっています。
いけださんは、まず、iOS 17の最新機能と「RoomPlanフレームワーク」について解説しました。このフレームワークは、iPhone ProやiPad Proに搭載されているLiDARセンサーを活用し、部屋の中をリアルタイムでスキャンできる機能です。壁や家具などの要素を自動で認識・解析し、ユーザーに音声フィードバックを提供するため、視覚障がい者にも役立つと期待されています。また、音声ガイダンスを基に、部屋の構造を効率よく把握することができる仕組みが搭載されています。
この技術は、Vision Proとの連携や、空間コンピュータとしての発展も期待され、コンピューターが部屋の構造やユーザーの位置を理解することで、より自然なインターフェースが実現される可能性があります。いけだ氏はまた、Swift Playgroundsを活用し、iPadだけでアプリを開発・テストする方法も紹介しました。このように、手軽にARや空間認識技術を試せる環境が整っており、開発者には新たな可能性が広がっています。
講義では「WhiteBase」と呼ばれるアプリについても触れられました。このアプリは、RoomPlanフレームワークとLiDARセンサーを活用し、部屋のスキャンをリアルタイムで行います。特徴的なのは、スキャン結果を白い壁のみにすることで、部屋の構造だけを抽出する機能です。通常のスキャンアプリと異なり、家具や不要な要素を排除し、純粋な空間のモデルを作成できるため、非常に実用的であり、空間認識に優れたデザインが可能となっています。
いけだ氏は、このWhiteBaseを使って、開発者が部屋の形状や構造を把握するための新しいアプローチが試せることを強調しました。また、スキャンデータはUSB経由で取り出して、3Dアプリで使用することも可能であり、建築デザインやインテリア設計などにも応用できると期待されています。このように、WhiteBaseは空間コンピューティングの可能性を広げる重要なツールの一つとして紹介されました。
自著の紹介や、USDZ形式の3Dモデルを回転表示するデモも行われ、アプリスクトを活用した多様な実用例が披露されました。最後に、Siriと連携してファイル名から情報を取得し回答を得る仕組みも紹介され、アップルスクリプトの可能性が幅広く示されました。
楽しく有意義な時間を過ごせました。
参加された方はもちろん、今回、残念ながら参加されなかった皆様も、次の機会をどうぞお楽しみに。
MOSA会員
暫定代表
いけだじゅんじ