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WWDC2007 帰国後のレポート
例えば、64BitアプリケーションではQuickTIme APIも使えなくなるのですが(これは昨年から判明していた)、参加者からは「今までQuickTImeはマルチプラットフォーム対応と説明してきたではないか、それが無くなるのならQTKit for Windowsを出してよ」と言う、至極真っ当な意見も出ていました。
とは言っても、現状では64Bitアプリケーションで使えないのはCarbonのユーザインターフェース回りのAPIに限定されるようで、Mac OS X 10.4で「DEPRECATED」(消滅するよ)宣言されたQuickDraw APIさえ、Leopardでもまだ生き残っています。実際のところソフトの互換性を考えれば、Carbon APIのすべてを早急に抹殺することは不可能でしょう。
結果としてそうなったとしても、68000からPowerPCへ、Mac OS 9からMac OS Xへ、PowerPCからIntelへと何度となくイバラの道を歩いて来た(笑)Mac専門プログラマは、もう一段高みに登るための受難だと思えば、CarbonからCocoaへの移行作業はそんなに苦になりません。ただし、多くのソフト開発メーカがそう考えてはいないという所に問題がありそうです。
現状、Macintosh専用ソフトだけを開発しているメーカはほとんど皆無であり、開発作業もマルチプラットフォーム対応が前提で行われます。そうした中で、Mac版だけを、Objective-CとCocoaという特異な組み合わせで開発しなくてはいけないという状況は、やはり多くのソフトメーカ(特に老舗)が腰を引く可能性があります。実際に今回の参加者からもそうした意見が多数ありました。さて、Apple社はそうした問題にどう対処するつもりなのでしょうか?
ちなみにiTunes for Windowsが登場した時、今回と同じ役目を演じたのが大先輩のQuickTimeでした。実はQuickTime for WindowsにはQuickDraw APIの大部分が含まれており、Windows上でPICT画像を表示するようなことも可能でした。これは、Mac OS 9上で開発したメディア系アプリケーションをWindowsへ移植する作業を楽にしようとした結果なのですが、そこには、Windows環境でもQuickTimeをスタンダードにしたいというApple社の思惑もあったわけです。残念ながら、その試みは成功したとは言い難いですが、実際にQuickTime APIを用いているWindows用アプリケーションが存在しているのも事実でして、今回の挑戦の意図を読み取るヒントもそこにありそうな気がします。
つまり、Apple社はソフト開発者の要求を満たすために(前回の話の続き)、将来的にCocoa for Windowsを提供するつもりかもしれません(昔のYellow Boxのように)。そうなれば、Xcodeで開発したアプリケーションが、そのままXPやVistaで(天が許せばiPhoneでも)起動可能となり、クロスプラットフォームをターゲットにしているソフト開発者も「もうひとつ」の強力な手駒を得たことになります。当然、Objective-CとCocoa開発環境の普及にも一役買うでしょう。まあ、新たにObjective-CやCocoaの技術を習得する時間は必要ですが、一度慣れてしまえば、これほど手軽、柔軟、安価(無料)な開発環境を手放すとは思えません。
Macでは仮想環境上でXPやVistaを動かせますので、XcodeでMakeして即座に動作確認という環境も簡単に構築できます。ひょっとしたら、さらに優れたソリューションをParallelsやVMwareが提供してくれるかもしれません。元来OSの役割は、アプリケーションに適切なサービスを提供することですから、一般ユーザから見ればアプリケーションが「主」でOSが「従」のはずです。加えて、昔ほどOSを意識する機会が多くないので、特定のアプリケーションがプラットフォームの「顔」として認知されれば、その動向についても部分的に主導権を握ることができます。先兵としてのiTunesやSafariが成功すれば、近いうちにMailやiLifeやiWorkなども移植されるかもしれませんね。
この戦略、Apple社にとってもハードウェア(ドライバ)周りに膨大な労力が必要とされるMac OS X for PCの開発より賢いと思います。つまり、Mac OS X for PCが一本売れるより、iLifeやiWork(ひょっとしてFinal Cut StudioやAperture)が売れた方が利益が大きいわけですから。当然、Mac OS Xが起動可能なのは相変わらずMacに限定されるので、自社プラットフォームの売上を圧迫すること(以前やった大失敗)もないでしょう。こうしたWindows用アプリケーションは、iPodやiPhone同様に別プラットフォームからMacへの誘い水としての効果もあるかもしれません…。
さて、何年か先にはCocoa for Windowsで開発されたアプリケーションが多数存在するようになるのでしょうか? 色々と面白い想像をかき立たせてくれるSafari 3.0 for Windowsの発表でした。
例えば、WWDC2007では…
「Mac OS X Scientific Computing State of the Union」
「Developing Collaborattive Scientific Applications」
「High-Performance Scientific Graphics on Mac OS X」
「Developing the Community for Apple in Scienc」
といった非技術系のセッションも用意されており、私もいくつか参加しましたが、どのセッションも大学の先生や学生達でぎわっていました(ランチタイム中の開催が多かった)。とにかくCarbonやCocoaの事を一時忘れ、科学好きな一人としてワクワクした気持ちで楽しめるセッションがあるというのは喜ばしいことです。当然、技術にフォーカスしたセッションを減らすわけにはいかないでしょうが(WWDCの主目的がそうだし)、ぜひこれからも、こうしたセッションを適度に増やして欲しいと感じました。ところで、以前にHarvard IIC「Science + Computing = Innovation」という記事を紹介しましたが、上記セッションのひとつでは、その記事に登場している先生(女性)のプレゼンも聞くことができました。
宇宙に広がるガス分布をビジュアル化するのにコンピュータサイエンスの先生の力を借りたと言う話なのですが、ヒントはCTスキャンした画像をボクセル化(3D表示)するところから得たようです。内容は、不得意分野をカバーするため別分野の人とのコラボレーションは大変有効であるという趣旨です。確かにこの先生、プレゼンでのマウスの使い方がぎこちなくパソコン操作はかなり不得意そうだった(すみません)のが印象的でした(笑)。そしてWWDCは、コラボレーションのパートナーを見つけるのにもってこいの場所となります。様々な分野のエキスパートとパソコンのエキスパートとのコラボによる成果の達成を目指し、日本の大学の先生方もWWDCに参加されてみてはいかがでしょうか。
パソコンを活用し学術的な結果をより理解し易い形で表現するというテクニックは、今後さらに重要度を増すでしょう。つい最近紹介した「Art of Code」もそうですが、科学や工業の分野だけでなく、教育、医学、考古学、美術や音楽などの芸術分野においてもパソコンを独自ツール(秘密兵器)として使うことは大きな可能性を秘めています(競争という意味でも…)。それにはプログラミングという手法が必須なのですが、現状ではそのための人材が極端に不足しています。そのため、一番の特徴的な性質なのに、パソコンがその手のツールとして能力を発揮する機会は多くありません(特に日本では)。純粋なコンピュータサイエンスではなく、パソコンを独自ツールとして鍛え、操ることができるプログラマ(職人)を育成する教育機関がもっと必要だと強く感じる今日この頃です。どこかの大学でそんな学科を作ってくれませんかね?
Internet JapanサイトにJohn Welch氏のWWDCレポート「Appleの開発者向け会議WWDCを振り返る」が掲載されています。Leopardの正式版がメニュー表示が変更されるだろうという推測については、私も一票!(と言うか、そうして欲しい)
WWDC2007 フォトレポート 2007.06.10
WWDCはまだ受付が開始されていませんが、サンフランシスコの「ASIAN ART MUSEUM」では、手塚治虫展が開催されています。WWDC会場からマーケットストリートを海と反対側に10分ぐらい歩き、シビックセンターを正面にした右側の建物です。めずらしくカラー原画(伝説的なものあり)が多数展示されています。ファンにはたまりません!
WWDC関連の話題を少しだけ。会場内の一階のバナーは当たりさわりのない内容なのですが、2階のバナーはどうも黒幕で隠されているようです。さて何が飛び出すのやら(笑)科学の子らも大変注目しております。
ついにWWDCの受付が開始されました。受付担当のお姉さんに「今年は人数多いからとにかく早く並ばないと入れないわよ。」と脅されたのですが(参加者にそう伝えろというルールになっているもよう)、まあキーノートはそれでも良いのですが、それぞれのセッションは前のが終わらないと次ぎへは行けないわけで…参加者を募集しすぎのような気します。少ないよりは良いですけどね(笑)。
本年のお土産「カバン」です。昨年があらゆる意味でひどかったという反省点がしっかり生かされており、大変まともな製品に仕上がっております。
アップルジャパン主催により日本からの参加者のパーティ(Welcom Reception)が中華街で開催されました。
アップルジャパンのWWDRメンバーの方々です。五日間お世話になります。
会場近くのバードの駅(パウエル駅)の構内やホームはiPodの広告だらけです。まだiPhoneの広告はひとつも見あたりません(不思議な感じ)。
WWDC2007 フォトレポート 2007.06.11
まずは会場の外に並びます。すでに長蛇の列(6時30分)
会場の中へは入れたのですが一階のランチコーナーで待たされます(7時00分)
ようやく2階までたどり着きました(8時30分)
ついに基調講演が行われる3階ホールへと到着(9時45分)
WWDC2007 フォトレポート 2007.06.12
さあ、今日からセッション漬けの日々が始まります。時差ぼけがつらい…。
朝ご飯は会場内に積まれたパンとコーヒーやジュースで済ませるのがお得です。
一階の食堂(モーニング&ランチ)コーナーの様子。とんでもない広さに、とんでもない数のテーブルが並んでいます。係のお姉さんがあまりの人の多さに呆れてました。
今年はアップルキャンパス(Apple本社)への巡礼がないため、カンパニーショップが出張営業しております(商品の種類は少ない)。アップルマーク入りのボールペンを30本ぐらい購入する人を目撃!
色々なラボ(自作アプリの動作確認などをApple社の技術者と一緒に確認することが可能)には、自由に利用できる最新マシンがぎっしりと並んでおります。ただし、今回は何も新型マシンが発表されませんでしたので、ちょと寂しいですね。いつも動作確認する人で賑わってます。
おなじみゲームコーナーも常設!昔はピンボールゲーム台(本物)なども置かれていました。今年は基調講演でゲームに関する大きな発表がありましたね。「ゲームとエロがメジャーの証」というのが仲間内の常識です。
一日のセッションスケジュールは各階のモニター表示で確認可能です。変更や追加セッションは、前日にApple社からメールで知らされます。その日の目玉セッションが追加されたりしますので必ず確認が必要です。
昔はダラダラとセッションが行われる部屋へ入っていたのですが、あまりにも参加人数が多いため、朝一番には入場コントロールが行われています(初めての出来事)。
黒幕で隠されていたバナーはLeopard関連の新機能紹介でした。ところで、Xrayはかなり優秀な開発ツールです。皆さん期待いたしましょう!
これが20年近く続いているWWDCスタイルです(笑)。
WWDC2007 フォトレポート 2007.06.13
WWDC会場内では無線によるインターネット接続が提供されていますが、あちらこちらには有線(Ethernet)による接続コーナーも設けられています。こちらのほうが高速で安定したネット環境を得られます。
リラックスして持参マシンに向かえるコーナーも各所に設定されています。この椅子は人気が高くてなかなか空きができません(取り合いとまではいきませんが)。
飲み物はこんな感じで炭酸やジュースが中心。コーヒーや紅茶コーナーも各フロアで自由に利用できます。コーヒースタンドも各フロアに出店していて美味しいエスプレッソやカプチーノを飲むことができます。水は会場内あちらこちらで補給できますが、水筒(ポット)やペットボトルを持参して移動していると便利です。
これが問題のランチボックス!今回も2日目からはこの形式となり温かい食事が出なくなりました(涙)初日はデザートも小ぶりで美味しく今回こそはと期待したんですけどねぇ…。
WWDC2007 フォトレポート 2007.06.14
本日は、参加者全員が楽しみにしているWWDC Bash(にぎやかなパーティ)の日です。
会場はモスコンーンセンターに隣接する「Yerba Buena Gardens」で、SF MOMAもすぐ近くです。
会場は今年の演奏者を待つWWDC参加者でいっぱい。
今年は食べ物も豊富(笑)後から来た参加者が食いっぱぐれることはありません。
登場したのは「OZOMATLI」2004年6月にリリースしたサード・アルバム『ストリート・サインズ』が2005年グラミー賞を受賞した「元気いっぱい」バンド!確かiPodのCM音楽にも起用されていたような…。
MOSA若頭特攻隊長もステージかぶりつきでノリノリであります。
盛り上がりは絶頂に! そして夜が更ける…。
WWDC2007 フォトレポート 2007.06.15
色々と話題が多かった(開発者として内側を見てみて)WWDC2007を振り返り、緊急のMOSA大集会(情報交換会)が開催されたのです。
ヒルトンホテル正面のカレー屋さんで、かなり、かってに、大規模な情報交換会を開催(堀口さん、林さん、ネゴご苦労様でした)。
Carbonがどうたら、Cocoaがどうたら、iPhoneがどうたら、バスケットがどうたら、深夜まで大いに盛り上がるカレー屋さん店内であります。
アルコールが無いので、ビールやワインを持ち込んじゃいました(持ち込み可)。
明日は帰国。さて、帰ってからの宿題が気になる今日この頃であります(自分)。