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WWDC 2009に思う(2009/06/30のモサ伝にて配信)
MOSA会長 小池邦人(有限会社オッティモ)
6月8日(日本では 6月9日の深夜)Steve Jobs CEO不在のまま、Philip Schiller副社長によるキーノート(基調講演)でWWDC 2009が開幕しました。「今回はJobs不在だからねぇ…」と油断していると痛い目に遭うと思い、キーノート待ち行列には午前6時前から並びました(前回より早い)。予想は的中、待ち行列は昨年以上の延びを示し、大きな会場をぐるりと一回り囲んでしまいました。今年の参加状況も「満員御礼!」です。会場に遅く到着した人の中に「オーバーフロールーム」(会場へ入れなかった人が映像のみ鑑賞する部屋)からもオーバーフローしそうになったという話も流れていました(笑)。行列の付近には、お馴染みのMacTechマガジン配布チーム、Tシャツや小物の投げ込みチーム、ドングルSDKを配布するメーカ、iPhone用ポルノサイトを宣伝する水着のお姉さんを乗せた馬車まで登場し、退屈な待ち時間を存分に楽しむことができました。
Philip Schiller副社長(このために少し痩せたのか?)のちょっと緊張気味の司会と、担当重役のそつのないナビゲートでキーノートも順調に進みました。何とか笑いを取ろうとした場面がことごとく失敗に終わったのは、まあ愛嬌です(笑)。WWDCのセッション内容はNDA(秘密保持契約)扱いで詳細開示は不可ですが、キーノートはNDA適用外なので、その概要については、既に関連サイトに多数掲載されています。今回も詳細については、そちらにお任せしたいと思います。噂通りにiPhone 3GSが登場しましたし、低価格MacBook Proの発売、Snow Leopardの最終日程と驚きの$29バージョンアップの発表などネタ的には十分満足できるキーノートだったと感じました(不満はCEOの不在のみ?)。ただし、iPhone OS 3.0やSnow Leopardの機能は既に発表済みの内容だったわけで、ソフト屋としては「次の一手」が何も示されなかった点に、若干のモヤモヤを感じたことも事実です。
初日はiPhoneのみを所有している参加者が多かったのですが、2日目からは、会場の多くの人がMacBook Pro(17インチ多し)を持ち歩いていました。キーノートでお買い得13インチMacBook Proが発表されたおかげで、それを現地調達して使う人もいたようです(会場のゴミ箱に空き箱が捨てられていた)。ほとんどの人は、セッション内容のメモ取りなどでMacBookを活用していますが、後ろから画面を覗くと、自作アプリを一生懸命デバッグしている人も結構いて「ちゃんとセッション聞けよ!」とか、声をかけたくなります(笑)。また「変なデスクトップだな?」と見ると、そのまんまのWindows XPが走っていたりして(昔からLinuxは結構いた)吹き出すことも多々ありました。そうそう、今はやりのネットブックをハックしてMac OS Xをインストール(大胆)している人にも結構遭遇したことも追加しておきましょう。
昨年のWWDCでは、Apple社のWebサイト(参加者のみ入れる)へと最新スケジュールがアップされ、それをiPhoneやiPod touch(もしくはMac)で参照していたのですが、今回は、iPhone&iPod touch専用の「WWDC09」アプリが用意されていました。それをダウンロードし自分のiPhoneにインストールすることで、参加者は最新のイベントやセッションスケジュールを参照できるわけです。アプリへは逐次最新情報が転送され、未読情報は画面の数値バッチで忠告してくれます。また、別途デバイスへインストールする「Provisioning Profiles」(認証ファイル)も同時配布されたのですが、これがオールマイティ版(デバイス識別子のUIDIを判断しない)と分かり、デベロッパーの中から「この仕組みを利用できるサービス形態が欲しいぞ!」と言う「大きな声」が上がっていたことも付け加えておきましょう(後に追記有り)。
昨年のWWDCの感想で「美しきスツールのために、次のWWDCでは4本目の足(ビジネス分野への進出)についての戦略を公開して欲しい!」と書いたのですが、残念ながらそちら方面については、Snow LeopardのExchange対応が強調された程度で、これといった大きな発表はありませんでした。当然「Mac OS Xのライセンシング」の話などはこれっぽっちも出ていません。また「パソコンを生産をしていないSunやIBMとMac OS Xがらみで提携したら?」とも書きましたが、そのSunも既にOracleに買収されてしまったわけでして、状況の変化の速さに驚かされる今日この頃です。まあ、Apple社のことですから「抜き足、差し足、忍び足」で、知らない間に自社製品をビジネス分野へジワジワ浸透させていくための準備をしているかもしれません…。iPhoneがらみに関しても、その傾向が見え始めている気もしています。
今回開催された多くのセッションは「iPhone OS 3.0」関連が中心です。また、全体の60%が初参加だと言うこともあり、「入り口」としての開発環境(Xcode Tools)関連のセッションも活発だったようです。しかし、十数年もWWDCへ通い続けているデベロッパーから見ると、それ以外は「成熟」の極みといった雰囲気が漂っていました。今まで何度も主役を演じてきたQuickTimeもQuickTime Xがらみのセッションがひとつだけ、今回はCocoaにしても目新しいトピックスはほとんど無い状況でした(当然Carbonセッションなどは皆無)。Snow Leopardで導入予定の、64Bitカーネル、OpenCL、Grand Central Dispatchなども、企業や大学のサイエンス系研究室では大いに力を発揮しそうな技術なのですが、コンシューマに直接結びつくトピックスではないことから、盛り上がり方も今ひとつ限定的なようです。
しかし、こうした地味なテクノロジーが、OS自身や付属アプリの開発に大いに生かされている可能性は無視できません。つまり、Apple社の自社開発におけるソフトの処理速度の改善や、より強固なシステム構築に大きく貢献しているわけです。そのことは、間接的ですがコンシューマにとっても大きなメリットとなるはずですから、Snow Leopardの登場が本当に楽しみになってきました。さらに気になった点は、キーノートでも見え隠れしていた、Mac OS XとiPhone OSの「統合」の流れです。現在、両OSでは「Core OS」と呼ばれているシステムモジュールが共通で存在しており、その割合は全体の80%を占めます。後は、両OSのユーザインターフェース・フレームワークであるAppKitとUIKitの差異を縮めれば、2つのOSは割と簡単に統合の道を歩むことになります。つまりCPU依存でコンパイルし直せば、MacでiPhoneのアプリが起動し、iPhoneでMacのアプリが起動することになります。
まあ、統合自体は少し未来の話かもしれませんが、「一歩先を行く」iPhoneアプリの開発を目指し、その先行メリットを得たい開発者は、iPhone OSと同時にMac OS Xの最新テクノロジーも勉強しておくことをお勧め致します。iPhone OS 2.0から3.0では「Core Data」「Spotlight」「OpenGL 2.0」「Pastebord」「VoiceOver(Accessibility)」などが、Mac OS X側から降りてきました。次の機会には「QTKit」「ImageKit」「CoreImage」「QuartzComposer」「Binding」「OpenCL」などが降りてくる可能性があります。逆に、Mac OS Xではトラックパッドによる「Multi Touch」機能が充実してきており、将来的にはiPhone OS特有の機能「MapKit」「GameKit」「StoreKit」「LibraryAccess」などが実装されるかもしれません。MacやiPhone(将来登場するかもしれない新デバイスも)を区別せず、総合的にApple社のテクノロジーを習得しておくことは、今後さらに重要性を増すことになるかもしれません。
今回のWWDCで一番残念だった点は「App Store」の改善について何も言及されなかったことです。iPhone 3.0でアプリ内からコンテンツを購入できる機能は追加されましたが、 App Store自体の機能拡張については何も新しい発表がありませんでした。現在、5万以上の商品が店頭に並べられているApp Storeですが、どうひいき目に見ても、自分の欲しているアプリを簡単に見つけて購入できるという「ショップ」の心地良さはありません。商品数が多くなっていくペースに店舗のリソースの整備が追いついていないわけです。やはり「欲しい商品を見つけてくれる優秀な店員」が絶対に必要です。まあ、AIを駆使した検索エージェントを搭載しろとまでは言いませんが、もう少し買う人に優しい店舗に改築して欲しいところです。これはiPhoneアプリ開発者とユーザのために早急に改善すべき問題だと思うのですが、Apple社はいったいどうするつもりなのでしょうか?
もうひとつの不満点は「iPhone Developer Program」契約形態の拡充が示されなかったことです。現在、このプログラムには「スタンダードプログラム」と「エンタープライズプログラム」の2種類が存在しています。このうち「エンタープライズプログラム」は社員数500人以上の大企業(加入している企業を聞いたことがないが…)が対象なので、ほとんどのiPhoneアプリ開発者は「スタンダードプログラム」へ加入しているはずです。しかしこの契約では、開発したiPhoneアプリはApp Store経由でしか販売できません。それ以外の手段としては、デバイス100台限定でAdHocによる配布が利用できます。「あれ、AdHocは200人までじゃないの?」と思われる方も多いでしょうが、現状のAdHocでは配布用リストには200人まで登録可能ですが、対象デバイスの方は何故だか100台までしか登録できないのです(Portalサイトのバグ?)。そんな訳で、AdHoc対象者は100人までに限定されてしまいます。
システムインテグレートを生業としているMac関連企業が、iPod touchに独自の自社アプリをインストールし、Mac関連ソフトや周辺機器と一緒に販売しようと立案したとします。 例えばMacで組んだPOSシステムの端末にiPod touchを使い、そこに専用アプリをインストールするようなケースを考えましょう。さて、このiPhoneアプリをどうやってデバイスにインストールするのか?「App Storeに無料アプリとして置き、ユーザにダウンロードしてもらえば良い…」という考えもあるでしょう。しかし、何らかの理由 で(配布タイミング、セキュリティ、環境設定、ライバル対策など)、それが不可能だと判明したら…そう、AdHocを使うしか手がないのです。つまり、商品が100セット売れる度に、さらに1万円を支払って「iPhone Developer Program」を追加契約するといった冗談のような話が現実となります。
Apple社が「それはレアケース」と考えているなら大間違いです。例えば一番の例は、今回参加者に配布された「WWDC09」アプリです。これは、不特定多数にApp Store経由以外でアプリを配布するケースです。こうした状況は、iPhoneが想定する「ビジネスシーン」でも頻繁に起こるでしょう。これを無料としてApp Storeに置かなかった理由は「一般ユーザによるダウンロードを避けたい」「プロファイル設定でWWDCが終われば起動不可にしたい」などが考えられます。つまり、自社でアプリをきめ細かくコントロールするのには、App Storeによる配布形態は大変不向きなのです。より多くの用途にiPhoneを活用したいと考えた時、現在の「iPhone Developer Program」の契約には大きな不備があります。会場でも多くの参加者の方に「何か良い方法はありませんか?」と尋ねられたのですが、現状ではうまい解決方法はありまん。Apple社には、早急に何とかしてもらいたいものです。
どうやらiPhoneの改訂ペースは1年毎で確定したようなので、次回もWWDC開催時期とも重なる可能性があります。また、Macがらみの次なる展開(Snow Leopard後)にも注目が集まるでしょう。加えて、噂の「新デバイス」が登場しており、そのOSやSDKの話題で、いつも以上に盛り上がっていることを期待したいと思います。
2009.06.07
今回は会場周辺の「のぼり」が無い代わりにApp Storeのアイコンが出迎えます。
WWDCチェックインのフロアは早めに訪れたデベロッパーで既に賑わっております。
恒例のお土産は、新作のカバンとTシャツです。今回は使い出があるでしょうか?
会場内から外を見ると、iPhoneアプリのアイコンが空中を飛んでいるようです。
アイコンシールはかなり拡大表示されているのでトレース処理されているとの噂!
サンフランシスコ・ダウンタウンの青空にはiPod touchの広告が浮かんでいます。
Apple Storeにもアイコンのオブジェが沢山。使用済みは作者にプレゼントしたら?
MOSAメーリングリストの猛者が集合(25人!)中華街で明日の傾向と対策会議(笑)
2009.06.08
今回はWWDCのスケジュール確認用として専用アプリが配布されています。
今年も6時ちょっと前に列に並びました。7時ごろには尋常ではない長さに…。
寒くて死にそうでしたが、7時半ごろにようやく会場内へと移動が始まります。
今回もMacTECHマガジンを配布していました。広告も増えていてなにより。
こんなのもらいました!後半にはビキニお姉さんの馬車も登場したとか(笑)
謎のSDKをもらう。どうもドングル開発キットのよう?ハードも付属してます。
そのまま会場内の通路で整列。ここで3階へ上がれと指示が出るまで待機です。
一休みしてパンとカフェの朝食を取る。コーヒーは今年からスターバックスだ!
9時半すぎに大移動開始。エスカレータで3階キーノート会場へと向かいます。
ついに目的地へ到着!キーノートの映像は既にAppleサイトにアップされています。
夕方にはアップル主催のパーティが開催されました。日本人参加者は300人以上!
2009.06.09
結局バナーに表示されていたiCalのアイコンが大きな意味を持っていました!
20面のディスプレーに数万のiPhoneアプリのアイコンが表示されています。
売れると、そこから波紋が広がります(笑)自分のアイコンを探す人多数!
本日から会場内にもカンパニーショップが開店しました。品揃えは貧弱です(涙)
それでも家族や知人へのお土産用として大量の商品を購入する人が並びます。
ラボも充実しており広大なスペースに大量のチェック用マシンが設置済みです。
会場の2FにもiPhoneアプリのアイコンシール(説明付き)が貼ってあります。
本日から本格的なセッションの開始!会場内でもスケジュール確認が可能です。
最近の傾向として人気セッションは席取りのため開始前に長蛇の列ができます。
今回のお土産Tシャツはなかなか可愛い!Snow Leopardもゲットしました。
2009.06.10
キーノート直前に登場した「美女を乗せた馬車」の写真を入手しました。
お姉さんが掲げている看板にはiPhoneアプリが印刷されているもよう(笑)
朝食は1Fフロアーで好きなパンを好きなだけ食べることができます。
ジュースも飲み放題!ちょっと不気味な色をしていますが味はそこそこ。
水は会場のあちこちに設置。ペットボトルに注いで持って歩くと便利です。
デザインアワード受賞のiPhoneやMacアプリが立て看で紹介されています。
この山積されているのがWWDC名物「ちょっと勘弁ランチボックス」です。
中身はこんな感じ。とにかく温かい物がないのが日本人には苦痛であります。
こちらはベジタリアン用のランチボックスです。今日は避けて外食しました。
「3時のおやつ」には、謎のケーキやポテトチップス、バナナなどが並びます。
本日は色々なスポンサーのパーティが開催される予定。移動はこれが便利!
2009.06.11
本日はお待ちかねのWWDC Bash!会場のYerba Buena公園へと向かいます。
公園の近くには、今回もダメ出しをくらった(笑)AT&Tの大きなショップも…。
WWDC参加者+Apple社員が全員が集合すると移動するのも難しくなります。
食べ物の種類は色々ありますが、多くの人がまず狙うのが「手巻き寿司」です。
飲み物も飲み放題!こちらもワインやビールなど色々と取りそろえてあります。
デベロッパーの集まりにぴったり「自作するホットドック」も人気があります。
ポテトチップスの横には何故だかベースボールの硬式球が?お土産にはピッタリ。
会場は風も強く結構寒いのですがアイスクリームが飛ぶように売れます(笑)
今年のBashのゲストバンドは「Cake(ケイク)」公式サイトはこちらです。
ステージのすぐ前まで人、人、人でいっぱい!大いに盛り上がりました。
そしてYerba Buena公園の夜はふける…。明日はいよいよWWDC最終日です。
WWDC最終日。ホテルをチェックアウトし会場に荷物を預ける人も目立ちます。
朝食やランチを食べた1Fホールです。初めて満員御礼で座れない経験をしました。
さすがに最終日ですから会場内の参加者にも落ち着いた雰囲気が漂っています。
みんなMacで何をしているのか?後ろからこっそり覗くのも楽しみのひとつ(笑)
昔だと最終日には誰もいなくなったものですが(観光で)最近はみんなまじめだ!
SF Apple Store(会場から歩いて3分)でのお土産にはGift Cardが喜ばれます。
今年もビール持参のヒルトンホテル前カレー屋さんWWDC反省会パーティは大盛況。
最近はホテルでの電源の争奪戦がすごいことになっています。エコじゃないよなぁ。
さよならサンフランシスコ!皆さんご苦労さまでした。ぜひ来年も参加しましょう!