2011年7月31日(日)、六本木の東京ミッドタウン内「インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター」におきまして、第8回「DEMOsa」を開催しました。今回も多くの皆さまにご来場いただき、大盛況の3時間となりました。
※動画(YouTube)はスピーカーにご了解のとれたもののみ掲載しています。
市販されている機器を組み合わせることで可能となる「無線で行うプレゼンテーション」についての紹介がありました。プロジェクタ+Apple TV+AirMac Express+スピーカーの4つがあれば完璧なプレゼンシステムができ、それら一式をバックパックに詰めて移動するのだそうです。HDMI入力を備えたブロジェクタにApple TVをつなげば、AirPlayを使ってiPad 2から静止画や動画を送り込んで映し出すことができるようになります。またMacにAirFlickというアプリケーションを入れるとMacからもそれが可能になります。このシステムを教室や会議室に入れると、発表の際にいちいち前に出てきてケーブルのつなぎ替えを行うとか、事前に先生のところに各人の資料を集めておいたりなどしなくても、「さあ、きょうは○○くん、どういう宿題をやってきたかな?」と振られたら、その場で自分の席から発表内容を飛ばして見せるようなことができるわけです。このようにAirPlayは今後非常に大きなポイントになっていくそうです。現在は、飛ばすことができるのは静止画や動画などの一部のコンテンツに限られますが、iOS 5になるとミラーリングができるようになり、すべてのプレゼンがAirPlay上でできるようになります。
1つのキーワードで複数のサイトを同時検索できるiPad用のアプリであるcu:rollについての紹介がありました。去年の秋にiTunes Music Storeでビートルズのアルバムが発売されて、断片的にしか聴いたことがなかったのを、全曲を通して聴いてみたらまた違った面が見えてくるのではないかと思って試してみたら、音楽のみならず映画など他のジャンルのものに影響を与えていることが分かって面白い経験だったそうです。次にメジャーすぎるもので何か面白いものがないかと思ってやってみたのが、黒澤映画を全部観てみるということでした。Webで作品を検索しながら借りて観ていくということを繰り替えすうちに、人にはそれぞれ持っている「検索のパターン」があるのではないかということに気付いたのだそうです。情報のソースとして利用するSNS、RSSフィードに対しては専用のアプリがあるのに、検索に特化したアプリはない、と。同じキーワードで複数のサイトを検索することを繰り返す際にそれを束ねるアプリケーションがあれば便利なのではないかと思って作ったのがcu:rollというiPad用のアプリなのだそうです。あらかじめ登録しておいた複数のサイトに対して同じキーワードでいっぺんに検索することができる機能を持っています。
未来と現在の家の姿を押さえることのできるソフトであるFingerPlanの紹介がありました。衣食住と言われる中の「住」において、いま最も活発なのが実はリフォーム業者さんなのだそうです。住宅の外回りを工事する業者さんが使うプレゼンソフトを主に作ってきたオーセブンさんが、iPadにインスパイアされて、今まで手がけたことのないプレゼンソフトを開発したそうです。営業マンお客さんのところに持って行き、これを通じて対話をするというソフトを作ろうと思ったとのことです。その家の未来の姿と今の姿を両方いっぺんに扱うことができるのがこのソフトです。使い方は極めて簡単。住宅というのは実は910mm四方のマス目の構成でできています。そこで、指を使って画面上に直接マスを並べて間取り図を作っていきます。さらに窓を付けたり家具を置いたりという作業を営業マンがお客さんの目の前で直接行えるわけです。平面図を描き終えたら、パースを付けて立体のイメージで見ることができるようになります。これはインターネット経由で専用サーバーで処理されています。このように本来はプロが使うツールなのですが、実は一般の人もこれを使って自分の家を設計することができるのです。何と無料です。「自分の家は自分で設計しましょう!」
画集のソフトの紹介がありました。一般的に画集をアプリとして販売しようとした場合、ページ割りやレイアウトなどは(画集の)作者によって個々に要求があるので、画集1件1件に対して1つ1つプログラマーが作って行かなければなりません。それだと大変なので、新たな仕組みを考えたそうです。また、出版する側の人、つまり作者や編集者は画集をiPadアプリとして販売する場合に「どうやって作ったらいいか分からない」「いくらかかるの?」などと言います。しかし、その一方で画集に対する要望は作者自身なだけにたくさん出てきたそうです。そこで実際にSF作家の方と相談した結果、「レイアウトとかページ割りはすべて作者に任せられるソフトを作りましょう」という取り決めをして作ったのがこのソフトです。AppStoreの方針として、単純に画を見せるだけのソフトを作るとリジェクトされるという噂もあったので、アプリならでは機能を加えるために、URLのリンクを埋め込んだり、メーキング画像を見れるようにしたり、さらにはイベントなどに作者が出向いた際に、その場でアプリを購入して購入者のiPadに作者自身がサインを書き込むことができる機能も仕込まれているそうです。既にこのやり方で作った画集アプリ「時空間画妙」がAppStoreで販売されているそうです。
八ヶ岳に住んでMacプログラマをされている佐藤さんのお仕事と最近作られたアプリの紹介がありました。佐藤さんは八ヶ岳に住んでプログラマーのお仕事をされているわけですが、最近では電車内の映像広告でも紹介されたアニマルパスウェイの仕事をされたそうです。これは車道を渡る小動物がクルマに轢かれてしまう事故を減らそうと、動物用の「歩道橋」を作ったプロジェクトです。このプロジェクトで佐藤さんは実際に動物がこれを利用しているかをモニタするための24時間監視システムを担当されたそうです。このように森の中に住んでいるために家の周囲には野鳥が来るわけで、その環境を生かして今までに野鳥の鳴き声を集めたCDを販売されたりしてきたそうです。既に野鳥の鳴き声図鑑をiPhoneアプリとして発売されていますが、現在iPad版を製作中で、iPadならではのいろいろな機能を鋭意組み込んでいるところだとのことでした。
HTML 5+CSS 3+JavaScriptの組み合わせによるパノラマ写真の視聴システムについての紹介がありました。高木さんたちはパノラマ写真を昔から撮っていて、その発表の場を何とか作れないかというのがあったところにiPadが登場して、iPadでパノラマ写真を見るというのは今までのパソコンやプリントした写真を見るのとは違って、目の前で全画面で見れて自分で触れるというのがとても新鮮に感じられたのだそうです。今まではQuickTime VRというものが主なパノラマプラットホームとしてあったのですが、HTML 5とCSS 3とJavaScriptを組み合わせるとiPhone上でもiPad上でもパノラマを見れる仕組みというのが出てきていて、それを利用して作っているそうです。PhoneGapという、HTMLで作ったものをXcodeに橋渡しする環境、HypeというHTML 5のアニメーションをオーサリングできる環境を利用することで、プログラミングのスキルのない人でもこれを使えばある程度のものが作れるとのことです。肝心のパノラマ写真を見せる部分は、Pano2VRというソフトを使って、立方体を構成する6枚の写真をCSS 3とJavaScriptを使ってVR画像のように見せることができるのだそうです。HTMLでもここまでできるという1つの例としての紹介でした。
iPadと外部ハードの連携を実現させる方法についての紹介がありました。世の中に存在するハードをiPadにつなげようとする時、そこにはMFi(Mad for iPad)の壁というものが存在しています。これはAppleにお金を払って契約をしないとハードウエアとiOSデバイスを接続できないということを意味します。そこでMFiを使わない方法がいくつか考えられてきました。その中の1つがiPad Camera Connection KitというApple純正のアダプタを使う方法です。これを使うと、iPadであればUSBのデバイスがいくつか使えるようになるので、既にいくつかの接続例が出てきています。今回紹介したいのはMIDIを使った通信です。MIDIというのは1980年代からある電子楽器の規格ですが、入力も出力もできるので応用範囲が広いのです。MIDI対応ソフトがAppStoreにいっぱい出ているので、これらと連携させて自分のデバイスを操ったりが可能です。ただ、そのためには、MIDIに対応したデバイスを自分で作る必要があります。今回紹介するArduinoというマイコンボードを使うと簡単にデバイスを作ることができます。Cに似たプログラムを書けば、ソフト的なコントロールもできるので、ソフトを書ける人はすぐに使うことができます。今回、そんな方法を使ってテトラポット型のコントローラを作ってみました。音の高さ、速度、音量を変更する。イベントに合わせて完全に無線でコントロールできます。簡単に使えるものなので、みなさんも是非やってみてください。
Tomoshibiプロジェクトと、iPad向けアプリの紹介がありました。震災のあとサンプラザ中野くんさんが自分の曲を歌って何とか皆を応援したいとUSTREAMの配信をしました。それを見ていた向谷実さんが「じゃあ一緒にやろうか」ということで、向谷さんがアレンジをしてレコーディングをしました。その様子もまたUSTREAMで配信されていたのですが、それを見ていた人の中で向谷さんの知り合いの中国人の人が「中国語版を作らせてくれ」と言って、翌々日にはもう送ってきたのだそうです。次に、ドン・グルーシンさんが英語バージョンを作らせてくれと言って、自分でアレンジしてさらに歌手を連れてきて収録をしました。このように次々と協力者が表れていろんな国のバージョンが出来上がって、現時点では7カ国後バージョンにさらにギターによるインストバージョンが存在するまでになっています。今回発表する予定だった藤本さんもこれを聴いていい曲だからと何かをしたいと考えたそうです。これらの曲はすべて無料にて配信されたのですが、iTunes Music Storeはアジアでは日本でしか利用できないため、他のアジアでもダウンロードできるようにとアプリにしたということです。このアプリは曲を流しながら「JAPAN」と「Earth Quake」という言葉でGoogleの画像検索をして得られた画像をその場で取り込んでスライドショーとして表示する仕組みになっています。現時点で3,000ぐらいダウンロードされていて6割は海外だそうです。
プロ野球ファンのための野球応援支援アプリの紹介がありました。この「ワンダホー スタジアム」というiPad用のアプリは、「データ」と「応援一体感」で楽しむ野球応援支援アプリです。その開発についてとアプリの特徴について話します。開発は今年の5月11日から始まって、8月の下旬ぐらいにリリースする予定だそうです。開発に従事している人数は3人です。開発の中で自慢したいところはPDS(Product Definition Statement)ということ、そしてMVC(Model View Controller)とKVO(Key Value Observing)というAppleの提唱する仕組みをうまく取り入れているところです。こういうやり方はアプリの負担を軽くすることができます。そして、テスティングです。テストではシナリオテストという手法を使っています。次にシステムの特徴としてはストリーミングのTweetsに対応しています。これは言うのは簡単ですが、実現するのはなかなか大変で、今回はGCDを使うことでうまく実現できました。データパネルという表現方法、それからツイットホイールという独自のUIでその時々に応じて必要なキーワードが自動的にホイール上に割り振られるので、簡単なそうさでツイートをすることができます。9月30日までは無料期間だそうです。
iPadを利用して踊りの効果的な練習ができるシステムについての紹介がありました。
杉山さんは踊りを習っているのですが、なかなか師匠のような動きができずにいました。何とか効果的に師匠の動きを身に付けることができないかと考えて、師匠の踊りと自分の踊りをムービーに撮って、それを比較して違いを理解することが効果的なのではないかと考えたそうです。そこで、中野さんに相談して出来上がったのがこのシステムです。iPadの広い画面を利用して2つの映像を上下に並べ、交互に再生しながら比較を行います。中野さんの説明によると、映像を両方同時に再生するのは無理なのだそうです(あとで可能であるとの指摘が小池会長からあり)。また、個々の映像を任意の場所で停止させ、その2つの静止画を重ね合わせて表示させることでさらに両者の動きの違いを細かく観察することができます。この仕組みを小学校の児童の体育の授業に取り入れたところ、劇的な効果が得られたとのことです。今後いろいろな分野に応用して行けたらと考えているそうです。
話題の手書きで記録ができる製品である7notesについての紹介がありました。株式会社MetaMojiはATOKなどで知られるジャストシステムを創業した浮川氏が2009年12月に設立した会社です。いろいろ事業をおこしていろんな計画があったのですが、昨年の4月にiPadが(アメリカで)出た時、知り合いに自慢しにくる人がいたのだそうです。浮川さんがそれを見て、それまでやってきたプロジェクトを全部止めて「全員これをやれ」と。一遍に会社の方針が変わるという出来事があったそうです。それがこの製品です。昨年の6月には開発に入って今年の2月にiPad版が出て、6月にiPhone版が出ています。この7notesのエンジンに当たるのがmazecというシステムです。文字認識エンジンは世界最高峰のフランス製のもの、かな漢字変換のエンジンはオープンなものですが専用の辞書を独自に開発し、さらには交ぜ書き用のエンジンも独自に開発したとのことです。スムースなインキングにも相当なこだわりを持って作ったそうです。認識の精度とスピードが非常に素晴らしく、「手書きってこういうものだよね」というそれまで持たれていた概念を超えたとのことです。目指したのは、テキスト文字と手書き文字を分け隔てなく扱えるということ。絵文字、顔文字、デコメの進化形として行けるのではないかと考えているようです。8月4日のiPhoneアップデート版と次のiPad版のアップデートで自動スクロールに対応するようになるそうです。また、テキストと手書きを混在させたデータをTwitterやFacebookを通じて共有し、手書きの寄せ書きのようなことができる仕組みもできるようになるということでした。
皆さまよりお寄せいただきました寄付金は、47,096円になり、日本赤十字社を通じて被災地へ寄付いたしました。
皆さんの暖かいお気持に心より御礼申し上げます。
お忙しい中、お集まり頂きました皆さま、ご参加ありがとうございました。
次回の「DEMOsa」にもどうぞご期待ください!